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2024年4月28日(日)

「人間の自由」こそ未来社会の最大の魅力

学生オンラインゼミ 志位議長が講演

 日本民主青年同盟(民青)は27日、日本共産党の志位和夫議長を講師に、学生オンラインゼミ第3弾「『人間の自由』と社会主義・共産主義―『資本論』を導きに」を開催しました。党本部の会場から全国に中継し、各地で中継会場が設けられ、ユーチューブのリアルタイム視聴は1717件に達しました。民青での学習や対話の中で出される「なぜ」や「もっと知りたい」というポイントを踏まえて、民青の中山歩美副委員長が質問。志位氏がそれに答えながら、「人間の自由」をキーワードに資本主義の矛盾や限界とともに、社会主義・共産主義の展望を、党大会決定の三つの角度((1)「利潤第一主義」からの自由(2)人間の自由で全面的な発展(3)発達した資本主義国の巨大な可能性)から講演しました。会場は真剣な表情で講演を聞く学生らの熱気に包まれました。


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(写真)学生オンラインゼミで質問にこたえる志位和夫議長=27日、党本部

「資本主義」は自由が保障された社会なのか

 中山さんは「『資本主義』は自由が保障された社会なのか」と質問。志位氏は、資本主義の下で「人間の自由」が大きく拡大したことは事実だが、逆行する害悪も起きているとして、二つの問題を指摘しました。

 一つは格差の拡大です。志位氏は「オックスファム」が発表した報告書によると、2020~23年の間に世界で最も裕福な5人の資産が2倍になる一方、世界の約50億人はより貧しくなり、グローバル大企業の利益も17~20年の平均から89%増えたと紹介。「超富裕層とグローバル大企業が空前の繁栄を謳歌(おうか)する一方で、労働者は低賃金と過酷な労働、不安定雇用の下に置かれています。個々人の努力ではこの現実から逃れられません。これで『人間の自由』が保障されていると言えるでしょうか」と問いかけました。

 もう一つは深刻な気候危機です。志位氏は世界の平均気温は産業革命以降すでに1・45度上昇し、コントロールできなくなる危険性が警告されていることに触れ「生存という『人間の自由』の根源が脅かされており、資本主義というシステムの是非が根本から問われています」と語りました。

 副題に「『資本論』を導きに」とした意味を問われ、『資本論』は、資本主義というシステムの本質を徹底的な科学的研究で明らかにした書であるとともに、資本主義を人類社会の発展の一段階ととらえて、社会主義・共産主義に交代する必然性を明らかにした書であり、未来社会論が全編にわたって豊かに語られていると述べました。

 日本共産党が目指す社会主義・共産主義の社会は、資本主義下で生じる害悪を乗り越え「人間の自由」が豊かに開花する社会だと強調。「その特質を日本共産党29回大会では三つの角度から明らかにしました」と話しました。

第1の角度 「利潤第一主義」からの自由

 第1の角度は「『利潤第一主義』からの自由」です。志位氏は、資本主義下では資本のもうけを増やすことが生産の動機・目的であり、『資本論』はその病理を解明したと強調。その害悪として、「貧困と格差の拡大」と「『あとの祭り』の経済」の二つをあげました。

 「『あとの祭り』の経済」について、資本主義社会では「社会的理性」が“祭りが終わってから”はじめて働くと指摘。バブル経済のあとで必ず恐慌がくることが分かりながら、繰り返さざるを得ず、「あとの祭り」が繰り返されると指摘。そのうえでこれだけは「あとの祭り」にしてはならない大問題が気候危機だと述べ、人類はこの社会的大災害を「あとの祭り」になる前に「社会的理性」を働かせて、解決できるかが問われていると話しました。

 「どうすれば『利潤第一主義』をとりのぞくことができるか」と問われ、生産の目的を変えることが必要だと強調。「生産手段を個々の資本家から社会(結合した生産者)の手に移すことで、生産の目的が『資本の利潤を果てしなく増やすこと』から『人間と社会の発展』に変わる」として、これにより二つの害悪である貧困と格差・労働苦、「『あとの祭り』の経済」から自由になると語りました。

第2の角度 人間の自由で全面的な発展

 第2の角度は「人間の自由で全面的な発展」です。「これはどういう意味か」と聞かれた志位氏は、未来社会の自由は、「利潤第一主義」からの自由にとどまらず、「人間の自由で全面的な発展」の中にこそあると強調。人間は素晴らしい可能性をもちながら、資本主義のもとではそれを生かしている人は限られているとして、「マルクスは、ここを変えたいと考えました。どうしたら『自由で全面的な発展』を保障する社会をつくれるかを、一貫して追求しました」と話しました。

 志位氏は、マルクスが研究の過程で、万人が「自由に処分できる時間」を得ることが社会主義・共産主義社会のカギだと突き止めていったことを紹介。『資本論草稿』では“搾取で奪われているのは単に“労働の成果”―『モノ』や『カネ』だけではない。本来、人々が持つことができる『自由な時間』が奪われている”“『自由に処分できる時間』こそ、人間と社会にとっての『真の富』だ”という趣旨の記述をしていることを紹介しました。

 その上で『資本論』の結論は「人間の自由で全面的な発展」に必要なことは「労働時間を抜本的に短くする」ことだったと指摘。社会主義・共産主義の社会は「労働時間の抜本的短縮」を可能にするとして、「そこにこそ『人間の自由で全面的な発展』の保障があります」と述べました。

 マルクスが「自由に処分できる時間」は人間的教養を豊かに身につけ人格を全面的に発展させるとともに、社会的交流を豊かに行い、自己を発展させることにも使うだろうと展望していたことを紹介し、「マルクスの未来社会論の一番の輝きはここにある」と強調しました。

第3の角度 発達した資本主義国での巨大な可能性

 話題は、第3の角度「発達した資本主義国での巨大な可能性」へ移りました。志位氏は、資本主義から引き継ぐ「五つの要素」として(1)高度な生産力(2)経済を社会的に規制・管理する仕組み(3)国民の生活と権利を守るルール(4)自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験(5)人間の豊かな個性―をあげ、「これらを継承するだけでなく、発展させることが大切です。今日はここに力点を置いて話したい」とそれぞれの内容を丁寧に語りました。

 この中で「『高度な生産力』が害悪をもたらす面もあるのでは」と質問された志位氏は、資本主義が生産力の発展をもたらすことが、労働時間短縮など未来社会の物質的な土台をつくりだすことを強調したうえで、次のようにのべました。

 「同時に、未来社会は資本主義のもとでつくられた高度な生産力を新しい質で発展させます。生産力とは、本来は、人間にとって役に立つものを生み出すための人間的能力です。ところが資本主義のもとでは、生産力は、資本の支配と管理のもとにおかれ、『資本の生産力』として現れ、搾取を強化し、自然を破壊する力をふるいます。未来社会に進むことによって、生産力は『資本の生産力』から抜け出し、本来の人間的能力としての姿をとりもどします」

 そのうえで志位氏は、「未来社会における生産力の新しい質」として、(1)「自由な時間」をもつ人間によって担われる、(2)労働者の生活向上と調和した質をもつ、(3)環境保全と両立した質をもつことになると力説しました。

 また「国民の生活と権利を守るルール」について、人間らしく働けるルール、十分な教育を平等に受けられる制度、ジェンダー平等など今私たちが取り組んでいるたたかいの課題の成果が、未来社会にも引き継がれるとともに、搾取がなくなるもとで豊かに発展させられることを明らかにしました。

自由と民主主義の諸制度は未来社会ではどうなるか

 「自由と民主主義の諸制度は未来社会ではどうなるか」と尋ねられて、志位氏は、マルクスは民主主義が「危険思想」扱いされていた時代から、自由と民主主義、普通選挙権と民主共和制のためにたたかったと紹介。「自由と民主主義を守り、発展させることに科学的社会主義の原点があります」「資本主義のもとで国民のたたかいを通じて豊かな発展をかちとった自由と民主主義の成果のすべてを引き継ぎ、豊かに花開かせることが私たちの確固とした立場です」と語りました。

 「五つの要素」を整理して、「今のたたかいは全て社会主義・共産主義社会と『地続き』でつながっている」と述べました。

 最後に志位氏は、発達した資本主義国から社会主義に進む道は人類が誰も踏み出したことのない挑戦だと指摘。「資本主義の発達した現代日本で社会主義への前進を目指す取り組みは、特別の困難性とともに豊かで壮大な可能性がある」と強調し、「日本で人類にとって誰も踏み出したことのない道をともに開拓しよう」と呼びかけると、盛大な拍手に包まれました。

講演の録画(YouTube)


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